tarou勤務病院の憩室出血の特徴・EBLの施行経験

大腸
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以前、学会で発表した内容をもとに紹介します。

2018年4月~2019年3月に大腸憩室出血と診断された115例の患者背景を検討しました。

では、お付き合い頂けると幸いです!

大腸憩室出血の患者背景(tarou勤務病院)

男女比75:40基礎疾患高血圧症70(60.9%)
平均年齢77(37-99歳)糖尿病23(20%)
憩室出血既往63(54.8%)虚血性心疾患37(32.2%)
抗血栓薬内服51(44.3%)腎障害14(28.6%)
NASIDs内服5(4.3%)肝硬変2(1.7%)
ショックバイタル4(3.5%)
来院時ヘモグロビン値11.4(4.4-16.6mg/dl)

半数は憩室出血既往

5割弱に抗血栓薬内服者

当院の大腸憩室出血の結果

造影CT検査施行例97(84.3%)
血管外漏出あり31/97(32%)
CS施行107(93%)
CSまでの時間21.0(2-144)
輸血必要例44(38.2%)
出血源同定例
(部位)
32/107(29.9%)
(C:1/A:16/T:1/D:2/S:12)

造影CT施行者の3割にExtraを認め、4割が輸血を必要としていた

ガイドライン通りの24時間以内でのCSが施行できていた

造影CT検査と出血源同定の関係

Extra+群(n=30)Extra-群(n=63)造影CT-群(n=15)P値
出血源同定16(51.6%)14(22.6%)2(13.3%)0.003

Extraがあった場合、5割で出血点を同定できた

Extraがなければ2割の出血源同定であった

単純CTやCTが施行できなかった場合は1割強での出血源同定だった

来院から造影CT検査までの時間とExtraの有無

Extra⁺Extra⁻P値
造影CTまでの時間(m)80.6±6.3890.8±4.870.22
【Extra⁺群】前処置方法と出血源同定
腸管洗浄剤浣腸P値
出血源同定(n₌16)10(62.5%)6(37.5%)0.70
【Extra⁺群】CSまでの時間と出血源同定
出血源同定(n₌16)出血源非同定(n₌14)P値
来院からCSまでの時間(h)10.12±7.919.5±6.240.81

来院から造影CTまでは早く撮影したほうがExtraを認めていたが有意差はない

出血源同定の中で前処置方法(腸管洗浄剤・浣腸)での有意差はない

CSまでの時間と出血源同定に関しても有意差はない

止血方法

  • 全例クリップ法にて止血術を施行
  • 縫縮法が25例(78%)に対し、直達法は7例(22%)であった
  • 同期間にIVRや手術となった症例は
  • 止血処置による偶発性は、いずれの止血法でも認められなかった

早期再出血(入院期間中での出血)

縫縮法(n₌25)直達法(n₌7)P値
再出血10(40%)0(0%)0.06

既報とほぼ同様、縫縮法での再出血率は4割

直達法での再出血は1例も認めなかった(だた有意差は認められない)

出血源同定に関しては、下記既報とほぼ同等の基準的な治療をしている

止血方法に関しては直達法は既報通り再出血率も低い良い治療方法と言えるが、どうしても露出血管が同定にできず縫縮法へ移行する場合を認めた

縫縮法の再出血率は4割と高率であり、ほかの止血方法も検討する必要がある

そこで…

EBL(Endoscopic Band Ligation)を施行

→2018年から憩室出血にも保険収載

82歳 女性 肝弯曲部にExtraあり

ニフレックにて前処置し、施行
  • 責任憩室を同定後両隣をマーキングクリップ
  • 一度、内視鏡を抜去し、PCF-Q260JIにEVLデバイスを付け替え、再挿入。そのまま、古サクションにてEBL施行とした。

EBL施行時の感想

EVLデバイスを装着すると視認性は悪く、出血源同定が難しくなる。

出血源同定時に挟むようにマーキングクリップをしておくことは有用であった。

直達法と違い露出血管を認めなくてもそのままEVLをかけるだけで止血ができるので安全・簡便であった。

出血量が多いときでも、再出血が低い(早期再出血0-15%、後期再出血0-21%)止血術が施行できる

注意点

長期ステロイドuser、透析患者の穿孔報告があるので、このような患者へのEBLの施行は慎重に!

長期ステロイド投与例は禁忌となっている

吸引により筋層や漿膜まで引き込むことはないとされているが、ex vivoでは回腸、右側結腸でのEBLで筋層の巻き込みがあったとされているので注意が必要。

麻薬、NSAIDs使用も結腸内圧の上昇や粘膜障害による壁脆弱化を伴い、憩室穿孔のリスクと言われているので注意が必要!

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お付き合いいただき、ありがとうございました。

当院での症例をさらに蓄積して結果をまた報告いたします!

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