直腸微小病変 解答編 大腸 Twitter Facebook はてブ Pocket LINE コピー 2021.07.08 2021.06.01 平坦な病変 答えは… 直腸カルチノイド このような病変であれば診断がすぐについたかもしれません…。 診断の手がかりは、直腸(特にRb)の小さな黄色調SMT!!本症例のようにSMTが目立たない平坦で小さな病変も… ちなみに… 今回の病変微小病変でなので消失しないように注意しつつ、過不足なく生検した。 目次 今回の病変カルチノイドは粘膜深層から発生するため、しっかりと生検しなければならない!内視鏡治療の適応内視鏡切除後の病理学的評価が重要レジデントがNETを認識せず、ポリペクトミー(HOT)を施行2個のリンパ節転移を認めた術前にカルチノイドを正しく診断することは重要である!! 内視鏡治療の適切なサイズは?国立がんセンター中央病院での直腸NETのアルゴリズム1.5cmまでは内視鏡治療の適応エビデンスの低さ、転移再発のリスクも含め十分なICが必要!脈管侵襲陽性のみの非治癒切除因子への追加治療はどうするべきか?国立がんセンター中央病院の報告脈管侵襲陽性症例も他追加切除因子がなければ経過観察が可能となるのか!?!?内視鏡切除後のリンパ節転移のリスク因子10年以上の長期経過を見てはいないので慎重な判断が必要!脈管侵襲陽性例も含め外科手術紹介としている内視鏡治療後のフォローは「何を」「どの間隔で」「いつまで」すべきか?膵・消化管神経内分泌(NET)診療ガイドライン直腸NET内視鏡切除後、長期フォローアップ中の再発報告NET内視鏡術後は、治癒切除でも最低10年はフォローアップが必要偽NETに注意~tarou勤務病院で必ず生検後に治療をする理由~リンパ濾胞性ポリープLymphoid hyperplasia no apparent carcinoid seen画像上、鑑別がつかない術前に生検をし除外する必要がある!! カルチノイドは粘膜深層から発生するため、しっかりと生検しなければならない! 直腸NET(カルチノイド) 日本では消化器NETの55.7% 特に下部直腸に頻発 癌よりも進行は遅いものの、リンパ節や遠隔に転移する(カルチ=癌、ノイド=もどき → 癌もどきの状態) 内視鏡治療の適応 →十分なエビデンスが乏しい→tarou勤務病院では以下を満たしているものとしています。 腫瘍径10㎜未満 深達度SM以浅が適応である(tarou勤務病院では治療前に前例EUSを施行している) リンパ節転移や遠隔転移を認めない場合 他にも「陥凹・潰瘍形成」は悪性度のリスクとされている。 →tarou勤務病院では上記の項目に当てはまらなければ、内視鏡治療を先行し、病理結果で追加治療の方針を決定する。 内視鏡切除後の病理学的評価が重要 脈管侵襲要性 多数の核分裂像 Ki-67指数高値 高いグレード(G2以上) 固有筋層への浸潤 腫瘍径(10㎜) の1つでも当てはまれば転移リスクあり →基本的にリンパ節郭清を伴った追加外科切除が必要 ただし…下部直腸に病変が多いことから人工肛門や直腸機能を失うことによる著しいQOL低下をきたす可能性がある。 NETを認識できなかった症例 レジデントがNETを認識せず、ポリペクトミー(HOT)を施行 病理で腫瘍焼灼あり腫瘍残存の可能性があるので追加外科切除とした 2個のリンパ節転移を認めた 術前にカルチノイドを正しく診断することは重要である!! 直腸カルチノイドの問題点 内視鏡治療の適切なサイズは? 国立がんセンター中央病院での直腸NETのアルゴリズム 腫瘍径2㎝以上はリンパ節転移率58~76%と高頻度 腫瘍径1㎝以上2㎝未満はリンパ節転移率18.5%~30.4%と高頻度のため基本手術としている。一方、欧米ではMP浸潤なく、リンパ節転移がない場合は局所切除を容認している(エビデンスは低い) エビデンスは低いが… 1.5cmまでは内視鏡治療の適応 エビデンスの低さ、転移再発のリスクも含め十分なICが必要! 脈管侵襲陽性のみの非治癒切除因子への追加治療はどうするべきか? 国立がんセンター中央病院の報告 1997年-2011年 内視鏡切除を施行したNET90病変(86患者) 新たに免疫染色追加(D2-40/抗シナプトフィジン追加でリンパ管侵襲、EVG/抗シナプトフィジン、抗CD31で静脈侵襲) 病変中値 5㎜ 深達度はSMにとどまる Ki67は3%未満(中央値0.9%) 脈管侵襲はHE染色のみの場合では陽性が1例だけ 免疫染色追加では約半数(46.7%)に脈管陽性となった!(ly:25.6%,v:38.9%) 全症例(HEで要請を認めた1例も併存疾患のため)無治療経過観察が選択されたが、経過観察中央値88ヶ月(12-233ヶ月)で再発転移は1例もない。 脈管侵襲陽性症例も他追加切除因子がなければ経過観察が可能となるのか!?!? 内視鏡切除後のリンパ節転移のリスク因子 脈管侵襲はリンパ節転移の優位なリスク因子(オッズ比4.98,P=0.03) 脈管侵襲を伴う症例の内視鏡節後の再発割合は0.3%(4/1022例、フォローアップ期間5年間) ただ… 10年以上の長期経過を見てはいないので慎重な判断が必要! (カルチノイドのフォロー期間について次項目を参照ください。) tarou勤務病院では… 脈管侵襲陽性例も含め外科手術紹介としている (手術侵襲より本人が手術を希望されない場合もある) 内視鏡治療後のフォローは「何を」「どの間隔で」「いつまで」すべきか? 膵・消化管神経内分泌(NET)診療ガイドライン 膵・消化管神経内分泌腫瘍(NET)診療ガイドライン2015年(第1版)では12ヶ月ごとの下部内視鏡、造影CTでのフォローアップを推奨されていたが… 膵・消化管神経内分泌腫瘍(NET)診療ガイドライン2019年(第2版)では同記載が消失している。 直腸NET内視鏡切除後、長期フォローアップ中の再発報告 脈管侵襲ないNETG1症例が5年以上の長期経過での転移を認めた NET内視鏡術後は、治癒切除でも最低10年はフォローアップが必要 某大学病理学教室名誉教授(消化管病理専門)にカルチノイドの経過観察期間について尋ねたところ… 10年以降の再発報告があるので「最低でも10年以上が望ましい」との返答でした。 tarou勤務病院では1年ごとの造影CT、下部内視鏡検査を最低10年はするように伝えています。 偽NETに注意~tarou勤務病院で必ず生検後に治療をする理由~ 直腸Rbに黄色調の小さな粘膜下腫瘍あり… カルチノイド!?!? 違います!!!生検結果… リンパ濾胞性ポリープ Lymphoid hyperplasia no apparent carcinoid seen 粘膜下層の正常リンパ濾胞の限局性過形成に伴う、粘膜下腫瘍様隆起とされる。リンパ濾胞が過形成をきたす原因は何らかの慢性刺激による反応性の変化とする説が有力である。組織学的には、粘膜から粘膜下層の胚中心を有するリンパ濾胞から成り、粘膜上皮は委縮し固有腺管の消失やびらんを認める。本邦では、rectal tonsil、benign lymphoma、pseudolymphomaとも呼ばれている。BLPは、欧米ではがず多く報告されているが、本邦での報告は比較的少ない。中高年の女性に多く、血便を契機に発見されることが多い。無症状の場合も少なくない。 画像上、鑑別がつかない術前に生検をし除外する必要がある!! まとめ 直腸NET(カルチノイド)は黄色調で平坦な病変もある 腫瘍径・脈管侵襲時の対応にはまだまだ議論の余地がある 緩徐に進行するため、治癒切除であっても10年以上のフォローアップが望ましい(エキスパートオピニオン含む) リンパ濾胞性ポリープとの鑑別が重要!疑った場合は生検が必要である 今回は少し体力のいるものでしたね。お付き合いくださいましてありがとうございました。詰め込みすぎでしょうか…疑わしくは検査!徹底していきたいですね。
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