本当は怖い胃潰瘍 解答編 胃 Twitter Facebook はてブ Pocket LINE コピー 2021.07.08 2021.05.29 非癌性潰瘍と癌性潰瘍 今回の2病変は… 目次 癌性潰瘍進行癌非癌性潰瘍=胃潰瘍バリウムでの見え方を内視鏡に応用するとイメージしやすい非癌性潰瘍(胃潰瘍)癌性潰瘍0-Ⅱc+Ⅲ型潰瘍(悪性サイクル)シューマ比較つまり…セカンドルックで生検セカンドルック内視鏡では止血を確認できた1ヶ月後の内視鏡フォローセカンドルックで生検診断まで4ヶ月かけてしまったクリップで止血セカンドルック内視鏡再出血止血翌日のセカンドルック1.5ヶ月後の内視鏡周堤とは(Dr.ヤンデルの臨床に役立つ消化管病理)良性潰瘍癌性潰瘍胃潰瘍は悪性サイクルだけではなく、癌性潰瘍の可能性をよく確認!癌性潰瘍の所見 癌性潰瘍 進行癌 潰瘍底やその周囲組織が癌塊によって裏打ちされているもの 2型~3型進行癌にみられるのが典型的な癌性潰瘍 癌による多量な深部浸潤に伴って病巣内部が脆弱化した状態 非癌性潰瘍=胃潰瘍 組織構築は粘膜筋板が断裂し、粘膜下層以深の胃壁が種々の程度に欠損している状態 潰瘍底は主に壊死、滲出物、炎症細胞浸潤を伴う肉芽組織によって、周囲組織は浮腫や繊維化などで裏打ちされている 特に早期胃癌にみられる病巣内潰瘍は、良性潰瘍と組織学的になんら変わらない場合がある(悪性サイクル) バリウムでの見え方を内視鏡に応用するとイメージしやすい 非癌性潰瘍(胃潰瘍) 癌性潰瘍 0-Ⅱc+Ⅲ型潰瘍(悪性サイクル) シューマ比較 つまり… 2cm以上の潰瘍 潰瘍が不正形なもの(類円形ではない、多角形ではない) 内部が不均一、多彩な陥凹を認めるもの 周堤形成があるもの(不整形であれば更に癌性潰瘍らしい) 当てはまらなければ、明らかな癌の所見や辺縁の0-Ⅱcを認めなくても癌性潰瘍の可能性を考慮し、セカンドルック時に生検が妥当 解答 症例1 セカンドルックで生検 1ヶ月後内視鏡フォローにしてしまい… 手術がdelayとなってしまった セカンドルック内視鏡では止血を確認できた 1ヶ月後の内視鏡フォロー白苔がなくなり、みずみずしい腫瘍粘膜が顔を出している 解答 症例2 セカンドルックで生検 PPI投与し、フォロー中に再度吐血 止血後、今度はピロリ除菌 1.5ヶ月後フォローにてようやく胃癌の診断 診断まで4ヶ月かけてしまった クリップで止血 潰瘍の形状はスムーズ・類円形辺縁は0-Ⅱc面、明らかな腫瘍の露出は認めなかったが、以下の所見を認めている セカンドルック内視鏡 前回に比べ辺縁の形状はやや不正形となったもののまだほぼ均一で類円系の印象0-Ⅱc面も認めない 再出血止血翌日のセカンドルック 1.5ヶ月後の内視鏡ようやく腫瘍が露出する状態になった 周堤はさらに目立ち明らかな3型胃癌となった 周堤は癌性潰瘍の所見? 周堤とは 辺縁の筋板が残存しつつ、下から炎症 腫瘍細胞etcに押し上げられることでできる (Dr.ヤンデルの臨床に役立つ消化管病理) 良性潰瘍 良性潰瘍であっても筋板の下に炎症etcの細胞浸潤を認めることで周堤が形成される。良性であれば周堤は均一となる。 癌性潰瘍 癌性潰瘍であれば筋板の下に癌細胞の浸潤を認める。潰瘍量は不整であるので周堤は一般的に不整となるが、症例2のように比較的均一になることもある。強い厚みなども参考所見となるが判断は難しい。 周堤がある時点で癌性潰瘍の可能性は否定できない 周堤が不整な場合は癌性潰瘍の可能性は上昇する まとめ 胃潰瘍は悪性サイクルだけではなく、 癌性潰瘍の可能性をよく確認! 癌性潰瘍の所見 2cm以上の潰瘍 不正形なもの 内部が不均一、多彩な陥凹を認めるもの 周堤形成があるもの 1つでも当てはまれば、癌性潰瘍の可能性を考慮し、セカンドルック時に生検が妥当! 今回の2症例いかがでしたでしょうか?たかが胃潰瘍、されど胃潰瘍。隠れた進行癌の発見が遅れてしまわないように、細心の注意を払っています。この投稿がみなさんの助けに少しでもなれたら幸いです。
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