解答編 この病気はなんでしょう? case1 この病気はなんでしょう? Twitter Facebook はてブ Pocket LINE コピー 2021.07.08 2021.06.20 答え 【この病気はなんでしょう?】はいかがでしたか?早速、病名の答え合わせをしようと思います! 原発性アミロイドーシス(AL) 解説 十二指腸の不自然な隆起・陥凹から悪性リンパ腫orアミロイドーシスを疑った。→ただ、アミロイドーシスによってここまでの隆起・陥凹所見を呈するのか?という臨床的疑問が残った 胃の多発する白色陥凹からもMALTリンパ腫orアミロイドーシスを疑った。 当時は…肺の病変は指摘されておらず気にしていなかった。 直腸の浅い陥凹も同様にMALTリンパ腫orアミロイドーシスを疑った。 十二指腸の隆起・陥凹領域すべてからアミロイド検出 上部内視鏡検査で浅い白色陥凹領域が多発→陥凹部からはアミロイド沈着を認めた 直腸不整な毛細血管の黄色部からアミロイド検出多発陥凹部からアミロイド検出 S状結腸の発赤領域(やや毛細血管が不整)からアミロイド検出 盲腸の黄色い過形成性ポリープ様病変からアミロイド検出(cold polypectomyで切除) 消化管へのアミロイド沈着 アミロイドーシスについて ◎本来、形成された蛋白(アミロイド)は正しく折りたたまれ人体に機能する。◎折りたたみ異常となった蛋白(アミロイド)は正しく機能せず、正しく分解もされず体内に蓄積していく。◎原因としては遺伝・慢性炎症・加齢などがあり、それぞれで分類される。◎心・腎・消化管・肝臓・神経に沈着し臓器障害をきたす。 × 警告を閉じる Amyroid support group.「アミロイドーシスへの認識」より 症状腹部膨満感(66%)・食欲不振(63.8%)・下痢(53.2%)その他悪心、嘔吐、腹痛など高頻度にある 症例の40%は腫瘍からの出血による吐血あるいは下血が認められ、直接の死因となると報告されている 消化管では特に十二指腸・小腸での沈着が多く、胃では前庭部に多いとされている→十二指腸はアミロイドーシスの診断を目的とした生検陽性率が最も高い部位 消化管への親和性が高いのは…【高頻度】AL型:免疫グロブリンL鎖からなるAA型:炎症の急性期蛋白からなるserum amyloid A protein (SAA)を前駆物質とする【稀】Aβ2M型:慢性腎不全時に増加ATRA型:トランスサイレチン由来 藤沢洌,鳥海純,高橋忠雄.消化器領域におけるアミロイドーシス.最新医学1975;30:1365-72.内野文彌,消化管のアミロイドーシス,日本臨床1991;49:117-21. アミロイドーシスの種類と肉眼形態 目次 十二指腸の隆起・陥凹領域すべてからアミロイド検出上部内視鏡検査で浅い白色陥凹領域が多発→陥凹部からはアミロイド沈着を認めた直腸不整な毛細血管の黄色部からアミロイド検出多発陥凹部からアミロイド検出S状結腸の発赤領域(やや毛細血管が不整)からアミロイド検出盲腸の黄色い過形成性ポリープ様病変からアミロイド検出(cold polypectomyで切除)Amyroid support group.「アミロイドーシスへの認識」より藤沢洌,鳥海純,高橋忠雄.消化器領域におけるアミロイドーシス.最新医学1975;30:1365-72.内野文彌,消化管のアミロイドーシス,日本臨床1991;49:117-21.AA型内視鏡病理内視鏡病理AL型内視鏡病理内視鏡病理潰瘍を形成した悪性腫瘍様の病変診断:ALアミロイドーシス「胃と腸アトラス」より引用当初… AA型 結核菌感染症、関節リウマチ、クローン病、悪性腫瘍など 慢性炎症に合併 粘膜固有層や粘膜下層の血管壁に沈着 微細顆粒状粘膜、びらん、潰瘍を伴う易出血性粘膜など粘膜病変を認める 内視鏡十二指腸は顆粒状粘膜を呈し、発赤を伴っている 病理粘膜固有層にアミロイド沈着あり 内視鏡血管透見の乱れ、不明瞭化、微細顆粒状の粗像粘膜 病理血管周辺にアミロイド沈着あり AL型 消化管粘膜下層や固有筋層に塊状に沈着 多発性粘膜下腫瘍様隆起やひだ腫大が見られる 内視鏡十二指腸は粘膜下腫瘍様の隆起多発(今回の症例の方が多発している) 病理粘膜下にアミロイド沈着あり 内視鏡大腸は黄色腸のSMT様隆起あり(今回の症例に近い) 病理粘膜下にアミロイド沈着あり 本症例の診断 潰瘍を形成した悪性腫瘍様の病変 EUSでは3/5層前の粘膜不整所見、 4層(筋層)の浸潤は認めなかった。 診断目的に病変の一部をEMRした。 粘膜下層中心にアミロイド沈着あり 手術検体ではEMR検体と同様の状態であった。 診断:ALアミロイドーシス 本症例のように胃のALアミロイドーシスは胃癌、悪性リンパ腫との鑑別は難しく診断の決定には生検が必須!粘膜表層では沈着の陽性率が低く、粘膜筋板or粘膜下層までの組織を採取することが重要である。 「胃と腸アトラス」より引用 当初… 腎癌からの慢性炎症→AAアミロイドーシスを考慮していたが、腎癌切除後もアミロイド沈着は改善しなかった。 腎癌はpT1bの腎細胞癌明らかな遠隔転移をきたすものではないと泌尿器科からの診断特殊免疫染色の結果はALアミロイドーシスの診断となった 骨髄穿刺や電気泳動を含め、施行したものの多発性骨髄腫やMGUSの所見はなく原発性アミロイドーシスの診断となり、血液内科へ紹介となった以後BD(ボルテゾミブ・レナデックス)療法施行となった。 多発する肺結節肺アミロイドーシスの診断となった(生検なし) まとめ 消化管アミロイドーシスは特に十二指腸、胃では前庭部に注目する!!! AAアミロイドーシスは粘膜固有層、周囲血管に沈着するため、粗像粘膜、びらん、潰瘍の状態となる! ALアミロイドーシスは粘膜下層/筋層に沈着するため、SMTを含め隆起の形態となる! 胃のALアミロイドーシスは腫瘍様の形状をきたす場合があり、筋板や粘膜下層までの組織採取が必要な場合がある! 参考/引用 文献 【送料無料】 胃と腸アトラス 1 上部消化管 / 八尾恒良 【本】楽天で購入
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