皆さんお分かりになりましたでしょうか?
病名の答え合わせからします。
ずばり!
特発性腸間膜静脈硬化症
でした。
補足ですが…
内視鏡学会専門医試験に頻出です。
しっかりと確認して損はないでしょう!
特発性腸間膜静脈硬化症
大腸壁内から腸間膜の静脈に石灰化が生じ、静脈還流の障害によって虚血性変化をきたす疾患
平均年齢 66.8歳
男女比 1対1.8
症状 腹痛、下痢、腹部膨満感、2割程度は無症状(便潜血陽性を含む)
病変分布 終末回腸~直腸に及ぶ、病変の程度は盲腸や上行結腸といった右側中心
内視鏡所見 粘膜の色調変化や浮腫、びらん、潰瘍を呈するのが特徴
CT所見 大腸壁や腸間膜静脈に沿って線状や点状の石灰化を呈する
漢方 87%に内服歴あり(全国調査)、うちサノシシ含有漢方薬(81%)、5年以上の内服者(92.6%)、5年以下の内服者(7%)
並存疾患 特発性門脈圧亢進症症例を含む肝機能障害(18.7%)、高血圧(7.9%)、紅斑性大疱瘡や橋本病・抗核抗体高値などを含む自己免疫疾患(5.8%)などが報告されている
漢方内服薬歴が多く、特にサノシシ(加味逍遙散など)が多い。
5年以上の内服者が多い疾患
CT所見
典型的な
左:壁肥厚と腸管壁及び壁外に線状石灰化、腸管周囲の炎症所見を認めた。
右:漢方休薬6年後、石灰化は改善した。
本症例
内視鏡画像
典型的な
Figure3 大腸内視鏡検査
左:盲腸 血管透見像は消失し、単発の類円形の潰瘍と発赤、青色調粘膜を認めた。
右:上行結腸 血管透見像は消失し、浮腫状で発赤、暗青色調粘膜を連続性に認めた。
本症例
組織像
①静脈壁の著明な繊維性肥厚
②粘膜下層の高度な線維化と粘膜固有層の著明な膠原繊維の血管周囲性沈着
③粘膜下層の小血管壁への泡沫細胞の出現
④随伴動脈壁の肥厚と石灰化
⑤血栓形成はない
組織検体:手術検体
Figure2 特発性腸間膜静脈硬化症(大腸切除材料)の組織像
a:ルーペ像、特にSM像の肥厚が目立ち、腸管壁を貫く静脈の硝子化および石灰化を伴う壁肥厚が見られる。
b:粘膜下層の小静脈の硝子化を伴う壁肥厚と間質の線維化が著明である。
c:粘膜内の小血管の壁肥厚と間質の線維化が著明で、陰窩は減少するも粘膜上皮の欠損はみられない。
d:肥厚した静脈壁の石灰化
Figure3 特発性腸間膜静脈硬化症(大腸生検材料)の組織像
a:粘膜内の小血管の壁肥厚と間質の線維化が著明でIMPに典型的な組織像を示す。
b:粘膜内の小血管の壁肥厚と間質の線維化は軽度な場合もある
静脈の病変により大腸粘膜病変をきたす疾患の鑑別
- Myointimal hyperplasia of mesenteric veins(MIHMV)
- Enterocolic lympho-cytic phlebitis(ELP)
- アミロイドーシス
が挙げられる。
(八尾隆史.特発性腸間膜静脈硬化症の病態と鑑別診断.日本消化器内視鏡学会雑誌.2012.Vol.54(3)2012:415-423)
各々の詳細については後日…
治療方法
- 依然確立された治療方法はない
- 一般的に保存療法(絶食補液)で経過観察
- 症状や所見の重症な症例、再燃を繰り返す症例の場合は外科手術
- 漢方薬が原因と考えられる症例→漢方薬の中止のみで症状が改善した報告あり
- 漢方薬投与で改善しない場合はバイアスピリン、ワーファリン投与で改善が報告された報告もある。(チクロピジンでは改善しなかったとのこと)バイアスピリン、ワーファリン単剤での報告なし
まとめ
特徴的な所見
青色の内視鏡粘膜
漢方内服
CTの静脈石灰化
よく覚えておいてください!
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